天才作家の妻

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 グレン・グローズ主演、『天才作家の妻』をDVDで見ました。

グレン・グローズといえば、80年代に話題になった危険な情事で、ウサギを鍋で煮ちゃった、怖いおばさんです。

ドラマ 『ダメージ』では、勝つためには手段を選ばない敏腕弁護士の役をやってました。

なんていうか、こう髪を逆立てて、キー!ってヒステリックに怒り出す表情が、なんとも巧みな女優さんです。

今回の映画では題名の通り、作家の妻役です。夫がノーベル文学賞の受賞電話を貰うところから、物語は始まります。

二人は今までの苦労が報われ、手を取り合って喜びます。

実はこの二人の出会いは大学での子弟関係。夫のジョーは大学教授、妻ジョーンは教え子でした。妻子がいたジョーはジョーンと駆け落ち同然で一緒になります。つまり不倫の関係から夫婦となったわけです。

授賞式の準備やらなにやらで、夫はどこへ行っても賞賛を浴び、妻のジョーンも嬉しそうと、ここまではやっと苦労が報われた夫婦に見えますが、妻のジョーンは今までの事をツラツラと思い出していきます。このジョーン、元々物書きの才能があったようで、学生時代に短編をいくつか書いています。これに目を止めたのがジョーでした。しかし、ジョーもまた、作家志望であり、二人はいつかジョーが書くものが評価されると、期待していました。出版社へ勤めたジョーンはジョーの売り込みに成功し、ジョーの書いた短編を持ち込もうとしますが、ジョーンが読んでもこれはちょっと。。、という出来。そこで、文才のあるジョーンは自分が手直しをして、出版社へ持ち込みます。すると、それは思いの外、評価が高く、それからは題材や物語の焦点をジョーがアイデアを出し、ジョーンが書くというスタイルになっていきます。ジョーンが書いている時はジョーが家事や育児をこなします。徐々にジョーの小説は売れ出し、作家としての評価も上がっていきます。その集大成がノーベル賞なわけですが。。

この展開に、どこか釈然としないジョーン。ジョーは口では事あるごとに、妻のジョーンのおかげで。妻がいなければこんな賞は貰えなかった。この賞は妻のものです。と言いますが、実際書いてきたのはジョーンなわけです。

二人の共同作業にしても、比率的にどうなんでしょうか。確かに、題材選びも重要です。でも、人に読ませる文章、人を惹きつける文章を書く能力がなければ、売れる小説にはなりません。なのに、対外的に評価されるのは、夫だけ。よく、何かで功績を残した人が、ここまで来れたのは妻のおかげでと言いますが、ジョーンの功績はこういった妻達と同列でしょうか?

物語の途中から、そういった苛立ちがジョーンに表れます。しかも夫のジョーはカメラマンの若い女性に色目を使う始末。若い頃から浮気にも悩まされてきました。常に夫を気遣い、模範的な良い妻を演じてきたジョーンですが、終盤、怒りが爆発します。もうあなたとはやっていけない!帰ったら離婚すると言い出します。慌てるジョーですが、ここから二人の激しい罵り合いが始まります。

グレングロースの本領発揮ですね、ヒステリックに叫びます。あなたの影で書き続けるのはもう嫌!浮気するたびに、その怒りを作品にぶつけてきた!と積年の恨みを言います。しかし、ジョーも君の書いた物を誰が買う?アイデアを出してきたのは自分だ。君は文章が書くのが上手かっただけと言います。身もふたもない争いですが、これが本音なんでしょうね。理想の夫婦のように見えた二人ですが、ジョーンは不倫の末に一緒になった負い目からジョーを助け、ジョーは文才がなく、妻に書かせているというコンプレックスから浮気を繰り返し。

結局、心臓に疾患があったジョーは、この争いの最中に倒れ、帰らぬ人になってしまいます。

ノーベル賞という輝かしい授賞式なのに、悲劇の妻として帰国する事になったジョーン。

しかし、なぜかジョーンの表情は穏やかです。最後に意味深なジョーンの笑みで映画は終わります。

う〜ん。。ジョーの死因は病死です。これは疑いようがありません。薬も飲んでいましたし、心臓の手術もしています。ただ、ノーベル賞の受賞式という事で、寒いスウェーデンへ来て、連日の歓待に、緊張の連続です。いつもより酒量も増えるし、環境も違います。寒さで室内との温度差もキツいでしょう。年齢を考えても精神的、肉体的どちらにも、けっこうなストレスがかかっていたと思います。

そこへ妻から離婚宣言と、ヒステリックに喚かれたら、血圧も上がるでしょうし、心臓への負担も相当だったでしょう。

そこでです。なぜジョーンは帰国まで我慢出来なかったのでしょう。何もここで今までの鬱憤を出さなくても良かったのでは?ジョーンという人は情熱的でありながら、物書きの常として、その場を俯瞰してみる事に長けています。そういう人が夫の人生で最高の瞬間に、ぶち壊すような事を言い出したのはなぜでしょう?

思うに、ジョーンはこの時でなければ、一生、夫の下で飼い殺しになる事に我慢がならなかったのではないでしょうか。自分の書いた物の評価が高い事はよくわかっています。若い頃のように女性作家といって、評価が低い時代でもありません。

でも、ジョーが生きている限り、ジョーンの名前で書く事は出来ません。ジョーがいなくなれば、自分の思うがまま書く事が出来ます。これが離婚となると、スキャンダルばかりがクローズアップされますし、マイナスな事ばかりです。

しかし、ジョーが悲劇的な死を迎えたら?寡婦として夫の名誉を守りつつ、自由も手に入れる事が出来ます。

意図的ではなかったとしても、ジョーの死はジョーンにとっては、思いがけない幸運だったのかもしれません。

二人の間に愛情がなかったわけではないでしょうけれど、ジョーンの中には悪露のように溜まった不満が、ジョーの一世一代の晴れ舞台が、忌々しく思えたのかもしれません。

夫婦って、誰でもあると思うんですが、この人が死んだら?と想像する事ってあると思います。その時に自由を感じるのか、悲しいと感じるのか、実際に手を下さなくとも、死んでくれたら・・・と。

ちょっと、怖い事を考えてしまう映画でした。おすすめです。

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